脳汁生活。

脳汁生活

無重力アパシーなる日々。

大人になり、感動を失くしたすべての人へ【ショートショート】

公園を抜けた先に手招かれていたようだった。

 

かろうじてまだ、初秋の風を肌が吸い取ってゆく。

 

子どもたちはつゆ知らず、朝と昼を従えている。

 

「行かなくちゃ」

 

1秒でも長くここにいたいような気がしていたが、叶わない。

 

静かな楽園も、見上げれば、ここにもあそこにも刻む音があって、私達を駆り立ててゆく。

 

乾燥した、1月分の束になった新聞をパラパラとめくっていく。

 

事象に命はなく、ただ、吹き込まれゆくだけだ。

 

「それなのに、随分と忙しそうだな」

 

笑われるのも時間の問題だと思う。

 

かねてより、自分の事にしか興味がなかった。

 

それなりに多くを得てきたつもりだが、何も変わらなかった。

 

実は、多少の有能さを持った現実を自在に操れるほど、シンプルでもタフでもなかった。

 

「むしろ、そっちが諦めたんだろう?」

 

無能で複雑でナーバスを持った君に振り回される方がよっぽどいい。

 

 「私は素直なままですよ」

 

公園はまだ、子どもたちの時間だ。

 

公園を抜けた先に手招かれていたようだった。

 

妖艶な魔女にドキッとしながら、城の全景を確かめる。

 

目をつむると、カンキンカンカンと、リズムの良い溶接音が聞こえる。

 

窓から書物が数冊舞い、キーキーと甲高い説教が聞こえる。

 

香ばしい匂いが鼻をつく。多分、ニシンのパイとか、かぼちゃのポタージュとか、だろう、絶対、間違いない。

 

目を開けると、嫌なものが目に入り、デザイナーオフィスを後にした。

 

同時に、懐かしさがこみ上げ、視界の輪郭が消えていく。

 

私はその気持ちが消えないうちに、急いで、両耳にイヤホンを付け、廃墟のようなトンネルを抜けた先にある、あの夏を思い出そうとする。

 

胸の中に確かに残る感覚や記憶を、久しぶりに浮かべてみた気がする。

 

時間と我を忘れ、がむしゃらに今を生きていた。

 

時間と我に追われ、がむしゃらに未来を生きていた。

 

失望しただろうか?ああ、行かないでほしい。今の君たちの前にいるのは、紛れもない、君だ。

 

「10年後、そう思われないように生きてみたら?」

 

かねてより、自分のことにしか興味がなかった。

 

笑われるのも時間の問題だと思う。

 

公園を抜けた先に手招かれていたようだった。

 

足は確実に、未来に向かっていた。

 

それは、あどけなく、泥臭い自分が描いていた未来とも、捨てることが上手になった自分が描いていた未来とも違うものだった。

 

「私は素直なままですよ」

 

あっという間に、秋の涼しげな風がノスタルジーを焼きつけていく。

 

公園は、みんなの時間になる 。

 

 乾燥した、1月分の束になった新聞をパラパラとめくっていく。

 

・・・すぐ隣に、大事にしていたあの本を数冊積み上げておいて。